所長挨拶
当学園は、児童福祉法に基づく県下唯一の児童心理治療施設で、「環境上の理由により社会生活への適応が困難となった児童を短期間入所させ、又は保護者の下から通わせて、社会生活に適応するために必要な心理に関する治療及び生活指導を主として行い、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うこと」を目的とする施設です。
新築移転にあたり、新たに常勤の精神科医師を配置するなど支援体制を充実してまいりました。開設10年の経過を踏まえ、近年利用増加のある発達障害や被虐待体験などを背景とした子ども達に、医療的な観点から生活支援を基盤とした心理治療を中心に、学校教育との緊密な連携による総合的な治療・支援を行っております。
「自分らしく みんなと共に」を掲げ、個人の特性は伸ばしながらも、社会で生きてゆく力を身に着けることを目指しております。
グローバル化社会の様々な価値観が混在する中、私たち人間を取り巻く世界は、毎日複雑に変動し続け、生きにくい世の中と言われています。
加えて、新型コロナウイルスの世界的流行、感染防止のための、自粛、臨時休校、経済活動の縮小、さらには地球規模での自然災害等、未曾有の情勢の中、発達途上の子どもにとっては、より、生きにくく、壁にぶつかったり、つまずいたりしても不思議ではない状況といえます。
そんな時、家庭で見守っていくということも大切ですが、少し距離をおいて第三者の手助けを得ることも効果的と考えます。
職員は日々生活する中で子どもたちと薄紙をはがすような成長にも心を配り、子どもたちと共に喜び合う。そんな気の遠くなるような繰り返しの中で、人を信用できず、攻撃的だった子どもたちが、相談する姿を見せ始め、人を許す心を身に付けていきます。
限られた時間の中ではありますが、ささやかすぎる、ありふれた幸せをかみしめながら、子どもたちと共に成長する貴重な機会を与えてもらっております。
子どもたちにとって、退所後の長い人生の中で、学園での経験が、糧になっていることを切に願うばかりです。